色彩値のL*a*b*は数値で指定できる色空間を構成すると申し上げましたが、今回から、それらの数値がどのように求められているかを説明していきたいと思います。
物体の色を知覚するには光が照明されていなければなりません。真っ暗な部屋では何も見えませんから、これは当然のことかと思います。物体はこの照明光を反射もしくは透過する際に照明光の一部の成分を選択的に吸収したり散乱したりします。
私たちはこの効果を目で捕えて色として知覚します。
 
ということで、色を数値化するにあたって色そのものだけでなく図-22のように照明と受光器としての目(そして脳での知覚処理も一部)を考慮に入れて数値化されています。
 
 
色彩値の決定に寄与する3つの要素
図-22色彩値の決定に寄与する3つの要素
 
これら3つの要素①照明、②色としての物体、③受光器としての目を繰り込んで色彩値を決定します。
ただし、色彩値としては物体の色を評価したいわけなので、①照明と③受光器としての目に関しては標準的なモデルを使用します。
つまり、色の色彩値をコミュニケーションする上で、ある特殊な状況の照明や特定の観察者の知覚における色を数値化してもあまり利用価値が無いためです。①照明と③受光器としての目の標準的なモデルはCIE(国際照明委員会)によって定義されています。 一方、②の色としての物体は測色計で測定することで求められます。
 
色彩値は最終的には3つの数値に集約されます。なぜなら人の目の受光器(錐体)が3つのタイプしかないためです。
 
私たちは光=可視光域の連続する電磁波=連続する波長(スペクトル)から構成されものを 3つのタイプの錐体で集約した結果を色として知覚します。
このシステムをモデル化するには、連続する可視光の波長域を3つの値に集約するモデルを構築する必要があります。
 
そこで、①照明、②色としての物体、③受光器としての目の波長に関する特性を1つずつ概観していくことにします。
 
①照明 CIEで定義されている標準的な照明のタイプがいくつか用意されています。
標準イルミナントとしてはD65とAの2つが定義されています。
定義というのは各波長における光の相対エネルギー分布が数値化されているということで、D65では図-23、Aでは図―24のような分光分布として数値として定義されています。
 
D65は6504Kの相対色温度を持つデイライト(昼光)の代表的なモデルとして、Aは2856Kの色温度を持つタングステン光の代表的なモデルとして定義されています。
 
 
イルミナントD65の分光分布
図-23イルミナントD65の分光分布
 
 
イルミナントD65の分光分布
図-24イルミナントAの分光分布
 
このほかにもD50、D65、D75やF1~F12がこれを補う照明タイプとして分光分布が数値として定義されています。
DXXXは昼光をFXXは蛍光灯の照明をモデル化したものを意味します。
蛍光灯にさまざまなタイプがあるためタイプに応じてさまざまなモデルを用意しています。
図-25にF1~F12 のタイプを示します。
 
 
イルミナントD65の分光分布
図-25 イルミナントFのタイプ
 
このようにモデル化され、波長における相対エネルギー分布が数値定義されたものを「イルミナント」と呼びます。
数値化された「標準の光」という意味ですが、可視光よりも広い波長域を定義しているため狭義の光には当たらないとして「イルミナント」と呼ばれています。
 
イルミナントはモデル化された光なので現実には存在しない場合もあります。
たとえば、昼光をあらわすDXXXというイルミナントは世界中のいくつかのポイントで測定された昼光の平均値を使用して定義されており、これを実現する現実の照明は存在しません。
ですから、良くイルミナントD50の標準光源xというような表現をしますが、正確にはイルミナントD50のデイライトシミュレーター(常用光源) ということでキッチリD50を実現した光というのはありません。
 
現在、多くの生活環境の中でLEDによる光が利用され、エネルギー効率の面からも主な照明光として急速に普及しつつあります。
しかしながら、このLEDによるイルミナントは2017年3月の現時点では未だCIEで定義されていません。
標準的なLEDの分光分布というものが確定しにくい現実があるのかもしれませんが、市場からは早急な対応が望まれています。
おそらく、もうそろそろ規格化されるのではないでしょうか...
色彩値の数値を決定する際には①照明の要素として、このイルミナントの中から1つを選んでその分光分布を色彩値の数値計算に使用することになります。
 
次回に残りの2つの要素を解説したいと思います。
 
 

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