今回は残りの2つの要素である②「色としての物体」と③「受光器としての目」をとりあげます。
 
②色としての物体
 
照明からの白色光はそのタイプによって分光分布に違いはあるものの、通常全ての可視域の光が十分な量含まれています。
物体はこれらの照明光に作用し波長選択的な吸収や散乱の後、反射もしくは透過による光として観測者に向けて光を再放出します。
たとえば, 図-26のように照射された照明光の波長は選択的に吸収・散乱され、その波長構成を変化させて反射もしくは透過することで着色することになります。
 
 
反射による影響
図-26 反射による影響
 
たとえば、赤いボールに照明が当たった場合、短波長側の照明成分はその多くが吸収によって熱に変化します。
一方、長波長成分は多くがそのまま反射され、結果として反射される波長構成が人に赤として知覚されることになります。
図-27では照明された光の各波長でのエネルギー量を100%とした場合、反射される光量が各波長で何%になるかを表しています。
 
 
物体による照明光のスペクトルの変化
図-27 物体による照明光のスペクトルの変化
 
このような物体が持つ反射の特性を分光反射率(透過物体の場合は分光透過率)と呼びます。
この分光反射率の特性こそが、その物体が持つ色の性質ということになります。
この性質は色の指紋のような意味を持ちます。(だからこそ、これの特性を測定するわけですが...)
残念ながら私たちの視覚はこの物質の色の特性の全てを捕えることができません。
私たちの目は、この特質が私たちの目に落とすを知覚しているにすぎないのです。
 
今日の分光測色計はこの色の指紋である分光反射率(正確には「分光反射率係数」←いつか説明します)をサンプリングによって測定します。
そして色彩値計算としてその特質が目に落とす影を計算して 色彩値として提示しているのです。
 
③受光器としての目
 
目による波長応答の特性もCIEによって標準化されています。
つまり、平均的な人の視覚の可視光に対する波長応答特性が数値として定義されています。
色彩値は個々の人間がどのように知覚しているかを云々しているのではありません。
色のコミュニケーションにとって個々の人の色の知覚量は意味がありません。
標準的な観測者がどのように知覚するかが重要になります。
幸運なことに、視覚という官能器官は正常な色覚を持つ人間では概ね同じような波長応答特性を持っていたようです。
このような幸運が色に関する視覚の標準化がうまく機能することになった要因だと言われています。
 
ではどのようにしてこの応答特性はモデル化されたのでしょうか?
もちろん生きた人間の目に電極のような端子を突き刺して実験することもできないわけです。
その代わりとしておこなわれた実験が等色実験と呼ばれるものです。
 
等色実験では図-26のように上下に並んだ2分視野によるマッチング実験として実施されました。
覆い用のスクリーンに開けた穴を通して上側と下側に提示した色をマッチングさせるという実験です。
 
 
物体による照明光のスペクトルの変化
図-28 等色実験
 
2分視野の片方にそれぞれの錐体を刺激するための原刺激の[R][G][B]*を用意します。
もう片方(図-28では下側)に目標の色光となる単色光(スペクトル光)を照射します。
この上下の色がマッチするよう[R][G][B]に用意されているボリュームでその光量を調節するという実験がおこなわれました。
各原刺激のボリュームは、それぞれ錐体内の3つの受光器に対する刺激量になっています。
人に知覚される全ての色は、単色光(スペクトル光)の加法混色で再現できるため各スペクトルと3つの受光器の刺激量の関係が判明すれば、この方法で全ての色に対する錐体の 応答特性が計算できるわけです。
 
この実験の際、目標色として使用された500nm付近の単色光(スペクトル光)はあまりにも鮮やか過ぎて、これら3つの原刺激の混色では等色することができませんでした。
そこで、原刺激の[R]を目標色(単色光)側に移動させ、単色光の鮮やかさを低下させることで等色を実現しました。
 
* 用いられた原刺激は[R][G][B]それぞれ700.0nm、546.1nm、435.8nmの単色光が用いられました。
 
 
鮮やかすぎる単色光への対応:等色実験
図-29 鮮やかすぎる単色光への対応:等色実験
 
このような実験を複数の被験者で実施した結果が図-30のようなCIERGB表色系の等色関数です。
 
 
RGB表色系の等色関数
図-30 RGB表色系の等色関数
 
もちろん、この応答特性は生理錐体の応答特性そのものではありません。
しかし、生理応答特性から線形変換で得られる応答特性だということができます。
 
つまり...少し長くなりますが...生理錐体の波長応答特性が仮にS、M、L(図-31参照)だとしましょう。(当時は分かっていませんでした。)
ある目標色が生理錐体のS,M,Lをそれぞれs、m、lだけ刺激していたとします。
さまざまな目標色に対して、このs、m、lが知りたいのです。
 
この目標色の刺激に等色するために[B]、[G]、[R]の原刺激をb、g、r使用したとします。
ここで使用した原刺激[B]はSの生理錐体だけでなく、MやLの生理錐体も刺激します。
しかし、原刺激[B]の波長は固定されているので、各S、M、Lを刺激する比率は常にS_b:m_b:l_bに固定されているはずです
同様に、原刺激[G]はS_g:m_g:l_gの比率で、原刺激[R]はS_r:m_r:l_rの比率で刺激します。
 
ということで、[S]を刺激する全ての量を合計するとs=[S_b×b]+[S_g×g]+〖[S〗_r×r]ということになります。
[M]では、m=[m_b×b]+[m_g×g]+〖[m〗_r×r] [L]では,l=[l_b×b]+[l_g×g]+〖[l〗_r×r] となり、結局、目標色のs、m、lは等色に使用した[B]、[G]、[R]の原刺激のb、g、rをそれぞれの比率による3x3の行列で変換することで線形的のに求めることができます。
 
つまりb、g、rで求めた応答特性b ̅(λ),g ̅(λ),r ̅(λ)は生理錐体[S]、[M]、[L]の応答特性s ̅(λ),m ̅(λ),l ̅(λ)にリニアな関係の応答特性になっているということです。
そして、いつでも3x3行列でs ̅(λ),m ̅(λ),l ̅(λ)に変換可能な応答特性だということができます。
ただ、この3x3の行列は当時は不明であったということです。
 
 
 
生理錐体の応答特性:smlとリニアな関係のgbr
図-31 生理錐体の応答特性:smlとリニアな関係のgbr
 
ということで、無事、標準的な人の錐体(に線形な)の応答特性CIERGB表色系の等色関数が求められたわけです。
 
話がだんだんややこしくなってきたので「受光器としての目」の残りの部分は次回に回します。
 
 

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