今回から色の測定器、測色計に関して少し説明していきます。
 
測色計は大きく分類すると、色彩の元となる3つの刺激値を直接測定する刺激値直読法による装置と、分光反射率(透過率)を測定して、そこから計算によってX,Y,ZやL*a*b*などの三刺激値、もしくはその他のインデックスを計算する分光測色計(分光光度計とも呼ばれます)とに分かれます。
 
以前にも説明しましたが、人間の目には「色」を判別するセンサー(錐体)に3つのタイプしか存在しません。このため、3つの独立したインデックスがあれば色を一意にあらわすことができることになります。
この3つの刺激量(たとえば、X,Y,Zなどの値、もしくはそこからリニアに変換できる3つの値)を直接測定しようというのが刺激値直読法による測定器になります。
原理的に言うと図 - 1のように3つの物理フィルター(+センサーの組合わせ)を用意し、サンプルからの反射(もしくは透過)光を測定しようとするものです。
この際、それぞれのセンサーの応答特性が応答特性 (もしくはそこからリニアな特性)になるよう物理フィルターの透過特性を調整したものを使用します。
 
三刺激値直読法による色彩計の模式図
 
図 - 1 三刺激値直読法による色彩計の模式図
 
三刺激値直読法によるの応答特性
 
図 - 2 三刺激値直読法による応答特性の応答特性
 
このようにセンサーの応答特性を人の視覚特性にマッチさせるよう各フィルターを設計した三刺激値直読装置は「色彩計」と呼ばれます。
色彩計は装置的にはシンプルなものになりますが、物理的なフィルターの特性を(もしくはそこからリニアな特性)に完全にマッチさせることは現実的には非常に難しいとされています。もちろん、数値的な最適化を行うことでできる限り視覚とのマッチングを図ります。たとえば、三刺激値の知れた色サンプルを測定することで数値的なフィッティングを行うことが可能です。通常、色彩計はこの操作をキャリブレーションと称して実施します(キャリブレーションには、装置内の照明変動などの補正の操作も含まれます)。色彩計が値がついたCMYK色パッチのキャリブレーションカードを使用するのはこのためです。
センサー応答特性と視覚特性である等色関数とのマッチ度は通称ルーター条件として表されます。
 
このように三刺激値直読法による色彩計の値には、ISOの正確な色彩値からのズレがシステムとして組み込まれてしまいます。
このズレの程度は測定対象物の色の組成に依存することになります。
このようなズレの存在にもかかわらず、依然として色彩計は多くの生産現場で使用されています。これは、生産の現場では色の絶対値よりも色の差である色差が重要だからです。通常、色生産の現場では、基準となる色見本があり、生産したバッチ(生産物)の色がどれほどこの色見本から乖離しているかが問題となります。
つまり、基準の色見本を測定し、次にその同じ機器でバッチ(生産物)を測定してその差をチェックするわけです。
測定器がISOの色彩から多少のズレがあったとしても、そのズレの方向や程度が同程度であれば、色の差に関しては問題なく評価できることになります。
このように同一機器で現物色見本と現物生産色を比較するための機器は「色差計」と呼ばれます。色差計というのは、一般的には色彩計のことで、主に色差のチェックが目的尾場合を呼びます。色差だけの確認であれば、ISOの色彩値から精度的に大きくずれたとしても、それほど大きな問題にはなりません。
 
 
これに対してサンプルから反射(透過)された光を分光的にサンプリングし、その分光特性を分析することで数値計算により三刺激値を求める測定器を「分光測色計(分光光度計)」と呼びます。
分光するため仕組みとしてはグレーティングなどのさまざまな分光器が使用されますが、平たく言えばプリズムのようなもので、光を約400nm~700nmの可視光域で各分光要素に分散します。分散した分光要素を細かなサンプリング間隔でサンプリングすることで色の指紋であるスペクトラル(分光反射率)の特性を得ることができます。
 
グレーティングによる分光測色計の模式図
 
図 - 3 グレーティングによる分光測色計の模式図
 
10nm間隔での分光反射率のサンプリング
 
図 - 4 10nm間隔での分光反射率のサンプリング
 
このようにサンプリングされた分光特性に対して、ISOで規定された応答特性 のモデル化された数値を適用することで正確な三刺激値を得ることができるようになっています。
 
ISOで数値により規定された応答特性
 
図 - 5 ISOで数値により規定された
 
 
これまでの色の生産現場での色彩管理といえば色差での管理が中心でした。つまり現物色見本が手元にあり、生産物と比較して色差を確認するという目的では色差計や色彩計といった測定器で十分目的が達成できていました。
しかしながら今日の生産の現場では、発注者側が色の基準色としてデータ(たとえばL*a*b*や分光値)によってブランド色などの基準色を定義し、その色に生産物の色をマッチングさせることが求められるようになってきています。
現物色見本によるワークフローでは、色見本間のバラツキ、経年変化、作成や配布の手間、グローバルでの展開の難しさなどがあるためです。数値として基準色を定義することでこのような障壁を克服すると共に、明確で永続的な基準色の定義が求められるようになってきています。
TIPS: Pantoneカラー(Pantone Matching System)でブランド色を指定する場合も、生産の現場ではPantone色見本の色を使用するのではなく、指定されたPantone カラー番号ののデジタル値(分光値およびL*a*b*の値)を基準値として使用することが推奨されています。Pantoneでは全ての色がデジタルとして定義されているため、生産現場ではこれらのデジタルデータを基準色として使用することで、世界中でぶれの無いブランド色管理が可能になっています。
 
 Pantone 色見本
 
図 - 6 Pantone 色見本
 Pantoneライブラリのデジタル基準色
 
図 - 7 Pantoneライブラリのデジタル基準色
 
このような数値管理を主体としたワークフローでは従来のような色差計や色彩計では対応できなくなってきています。
また、ベストマッチなど測定サンプルの分光値を解析することで色彩値をマッチグさせるための最適濃度をガイドする、といった便利な機能も分光測定をベースにすることで実現できるようになってきています。ベストマッチについてはまたいずれどこかの回で詳しく説明したいと思います。

twitter facebook

お問い合わせ/見積もりの依頼 03-5579-6545